良寛記念館とは

水平線に浮かんで見えるのが佐渡ケ島

 「ほら、海が見える」「水平線に浮かんで見えるのが佐渡ケ島かな」。
展示室へと続く回廊を渡る時、参観者はきまって、こう歓声を上げます。

 良寛もこう歌に詠みました。

古へにかはらぬものは荒磯海と
向かひに見ゆる佐渡の島なり

 良寛記念館は、そんなロマンと郷愁を誘う風光絶佳の地、虎岸ケ丘に建っています。設計は、建築学の泰斗・谷口吉郎氏の手によるもので、清貧に生きた良寛にふさわしく、清楚で典雅なたたずまいを見せています。

 江戸時代を代表する禅僧・詩人・歌人・書家である良寛。何より毬つきや子供達とのエピソードによって歴史上最も愛されている人・良寛。良寛記念館はそんな良寛の遺墨と芸術を顕彰するため、生誕二〇〇年の記念事業として昭和四十年に開館されました。

 

耐雪庵  門を入るとすぐ左に耐雪庵があります。耐雪とは、記念館生みの親・佐藤吉太郎氏の号、庵は良寛が仏道修行につとめ、独自の芸術を大成させた、あの五合庵を模したものです。

 庭園は、石油王・中野貫一邸より移したもので、重厚な石燈籠や庭石を配し、桜・庭藤・木槿・くちなし・萩など、四季折おりの姿を見せてくれます。

 

受付へと続く参道  また、受付へと続く参道は川の流れをイメージしたもので、下流から上流、そして清らかな良寛芸術の源流へと皆さんを導いてくれます。

 

展示館  受付を済ませ、右手に日本海と佐渡ケ島を望みながら、長い回廊を渡ると、そこに展示館があります。

 

展示館  館内に展示されている遺墨の特徴は、漢詩・和歌・仏語・手紙など良寛の中年期から最晩年までの作品が揃っていることです。

 悲運に泣く弟を気づかう「人も三十四十を越ては・・・」ではじまる手紙や、「天寒自愛」の言葉に熱い想いが感じられる維馨尼宛の手紙。亡き父母に対する思いが胸にせまる「中元歌」や「そめいろ」の俳句。一字一字がまるでほほえみかけているような「般若心経」や、亡くなる前年に書いたという神韻縹眇とした「南無阿弥陀佛」など。そうした作品を通して、良寛の高い芸術性と深い愛が伝わってきます。

 遺墨の他には、川合玉堂・小林古径・中村岳陵・山口逢春・棟方志功など、大正・昭和の画壇の巨匠の手による、良寛の逸話をテーマにした絵画が多数展示されています。中でも、深く良寛に傾倒した安田靫彦氏の「良寛和尚像」は、凛とした厳しさと気品を感じさせる名品です。また、良寛と同時代に生きた宮川禄斎や杉本春良の描いた肖像画も、良寛の風貌を知る上において貴重なものです。

 展示館の裏手にまわりますと、良寛がぬかずいた生家の墓と歌碑があります。

沖つ風いたくな吹きそ雲の浦は
わがたらちねの奥津城ところ

 母を思う良寛の心が時を超えて伝わってきます。

良寛 語らい  最後になりましたが、「良寛と夕日の丘公園」にもお立ち寄りください。ここは新潟景勝百選の一位に選定されたところで、眼下には良寛が少年時代を過ごした全国的にも珍しい妻入りの街並みと日本海を、水平線の彼方には良寛の母のふるさとと佐渡ケ島を、右手には越後の名山・弥彦山、さらに五合庵のある国上山を一望することができ、良寛の生涯を偲ぶには最適のロケーションとなっています。

良寛と夕日の丘公園  良寛は日本人にとってもっとも懐かしい人といわれます。もっとも美しい人ともいわれます。不安の時代を生きる私たちにとって、良寛の残した芸術と優しくのびやかな生き方は、大きな指針と癒しを与えてくれます。

 良寛に会いにおいでください。お待ちしております。